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30:小規模店舗の空間設計

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小規模店舗の空間設計|10坪・20坪を最大限に活かすアイデア集|店舗デザイン・設計・施工の工夫

10坪や20坪という限られた面積で、思い描いたお店を実現できるだろうか——そんな不安をお持ちではないでしょうか。店舗デザイン・設計・施工において、面積の小さな店舗には特有の難しさがあります。席数を増やせば窮屈になり、ゆとりを取れば採算が合わない。収納が足りず、通路に物があふれる。小規模店舗では、こうした問題が面積の小ささゆえに一気に表面化します。一方で、面積が小さいほど設計の一手が効きやすいのも事実です。この記事では、初めての開業やリニューアルを検討されているオーナー様に向けて、10坪・20坪の店舗を活かすための考え方を、面積配分・見せ方・収納・費用という4つの視点から整理します。

小規模店舗こそ設計が効く|店舗デザイン・設計・施工で最初に押さえたい前提

限られた面積でお店をつくるとき、最初に必要なのは「何を諦めるか」ではなく「何を優先するか」を決めることです。そのためにも、まずは面積の感覚と、小規模店舗ならではの特性を押さえておきましょう。

10坪・20坪はどれくらいの広さでしょうか

1坪はおよそ3.3平方メートルですので、10坪は約33平方メートル、20坪は約66平方メートルとなります。ここに厨房や作業スペース、トイレ、収納、そして客席を収めていくことになります。注意したいのは、募集図面の面積すべてを客席や売場に使えるわけではない点です。壁や柱の厚み、設備が占める部分、既存の段差などを差し引くと、実際に使える寸法は図面の印象より小さくなります。契約前に現地で実測し、使える範囲を確かめておきましょう。同じ10坪でも、間口が広く奥行きの浅い物件と、細長い物件とでは取れるレイアウトがまったく異なります。近い規模の店舗を実際に訪れ、席数や通路の感覚を体で確かめておくこともおすすめします。

小規模であることは弱点ばかりではありません

賃料は、立地や契約条件が同程度であれば、面積が小さいほど抑えやすくなります。光熱費は面積だけで決まるものではなく、設備の種類や使用量、営業時間によっても変わりますが、空調する空間が小さいぶん条件次第で負担を抑えられる場合があります。また、スタッフの人数が少なくても店内全体に目が届き、お客様との距離が近い接客がしやすくなります。席数が少ないぶん、満席の状態をつくりやすく、活気のある雰囲気が生まれやすいという面もあります。小さな規模の店舗が持つこうした特性は、コンセプト次第でそのまま強みになります。

一手の影響が大きいからこそ、順番が大切です

20坪の店舗で通路を10センチ広げる判断は、100坪の店舗で同じことをするのとは意味が違います。一つの決定が席数や作業性に直結し、後戻りの余地も小さくなります。だからこそ、思いついた順に決めるのではなく、業態とコンセプト、想定する客単価と客数を固めてから、面積の配分、動線、仕上げという順番で検討しましょう。私たちアースラインでは、設備負荷の高い重飲食(火力・排気・給排水の負担が大きい業態のこと)から高級飲食店まで幅広い店舗づくりを手がけ、企画から設計、施工までを自社で一貫して管理しています。

面積配分から考える|席数・厨房・バックヤードの優先順位

小規模店舗の設計は、突き詰めれば面積の配分です。どこに何平方メートルを割くかを決めることが、そのままお店の性格を決めていきます。

「売上をつくる面積」と「それを支える面積」を分けて考える

客席や売場は直接売上を生む面積、厨房・バックヤード・収納・通路はそれを支える面積です。支える面積を削れば客席は増えますが、作業が滞って提供が遅れ、結果として売上が伸びないことも起こります。逆に作業スペースを優先しすぎれば、必要な席数を確保できません。どちらかに寄せるのではなく、想定する営業スタイルから必要量を積み上げて判断します。

席数はメニューと客単価から逆算する

席数は多いほどよいというものではありません。手順としては、まず目標とする1日の売上と想定する客単価から、必要な来客数を考えます。次に、営業時間と1組あたりの滞在時間、時間帯ごとの混雑の差、席が埋まらない時間帯があることも踏まえて席数を見積もります。そのうえで、厨房の提供能力とスタッフの人数で無理なく対応できるかを確認します。提供が追いつかない席数は、待ち時間となってお客様の評価に跳ね返ります。10坪ならメニューやサービスを絞って少人数でも回せる形に、20坪なら客席に加えて仕込みや待機のスペースも確保する、というように、規模によって検討の重心も変わります。席数と動線の関係については座席数と動線で売上を最大化する方法でも詳しく取り上げていますので、あわせてご覧ください。

厨房とバックヤードは削りすぎない

小規模店舗で最も判断が難しいのが厨房です。客席を優先して厨房を圧縮すると、仕込みの場所が足りず、営業中に食材や什器の置き場に困ることになります。提供する品目を絞る、仕込みの一部を営業時間外に回す、既製品を活用するといった運営面の工夫とセットで、必要な広さを決めていきます。厨房内の配置の考え方は効率的なキッチンレイアウトの作り方でも解説しています。

トイレ・通路は基準を先に確認する

トイレや通路の仕様は、好みで決められる部分ばかりではありません。建築や消防に関する基準、飲食店であれば保健所の基準、自治体の条例によって、必要な設備や寸法が定められている場合があります。小規模店舗ではこれらの占める割合が大きくなりますので、平面計画を描き始める前に、設計者を通じて所管の窓口に確認しておきましょう。

狭さを感じさせない空間のつくり方|視線・高さ・光の使い方

実際の面積は変えられなくても、体感としての広がりは設計で変わります。ここでは、小規模店舗で効果を実感しやすい工夫を整理します。

視線の抜けをつくる

人が空間の広さを感じ取るのは、視線がどこまで届くかによるところが大きいものです。入口から店の奥まで視線が通る配置にする、背の高い什器で視界を遮らない、壁で仕切る代わりに床の素材や照明で領域を分ける。こうした工夫で、同じ面積でも奥行きを感じやすくなります。窓のある物件では、窓際を塞がないことも有効です。

高さ方向を使う

床面積は増やせませんが、高さ方向にはまだ余地があることがあります。天井を仕上げずに躯体現し(天井裏にある建物の構造部分や配管を見せる仕上げ)として天井高を確保する方法です。ただし、どの物件でもできるわけではありません。貸主や建物管理者の承諾が得られるか、既存の防火・耐火上の仕様や消防設備、配線・配管の状況に支障がないかを確認したうえで検討します。既存の天井を撤去する場合は、石綿(アスベスト)の事前調査など必要な確認や手続きもありますので、設計者や施工会社に早めに相談しましょう。音が響きやすくなり空調の効率にも影響しますので、吸音材を部分的に使う、席の配置を工夫するといった対策もセットで考えます。収納を高い位置に設ける場合は、手の届く範囲と安全性の確認も必要です。

色と素材で軽さを出す

明るい色は空間を広く感じさせやすく、濃い色は落ち着きと奥行きをつくります。基本を明るめの色でまとめ、一面だけ濃い色にするといった使い分けが有効です。色数と素材の種類を絞ることも、視覚的な情報量を抑え、広がりにつながります。

鏡とガラスは使いどころを選ぶ

鏡は空間を広く見せる手段としてよく使われますが、客席の正面全面に張ると視線が合い、落ち着かない空間になることもあります。壁の一部に用いる、腰から上だけに用いるなど、範囲を限定するほうが効果を得やすくなります。ガラスの間仕切りも、視線を通しながら領域を分けられる手段です。清掃の手間や割れた際の安全性も含めて選定します。

什器は「浮かせる・抜く・そろえる」

脚の見える什器や、壁に取り付けて床から浮かせた什器は、床面が見える分だけ空間を広く感じさせます。什器の高さをそろえると視線が水平に流れ、雑然とした印象を抑えられます。造作でつくり込む部分と、既製品で軽やかに見せる部分のバランスが、小規模店舗では特に効いてきます。

収納と設備を最初に織り込む|小規模店舗でつまずきやすい実務ポイント

開業後に「こんなはずではなかった」となりやすいのが、収納と設備のスペースです。どちらも図面上では地味な部分ですが、小規模店舗ほど影響が大きくなります。

必要な収納量を先に数える

食器、調理器具、消耗品、在庫、販促物、スタッフの私物、清掃用具。それぞれどれくらいの量を、どの頻度で使うのかを設計の前に洗い出しておくと、必要な収納量が見えてきます。数えずに進めると、開業後に段ボールが通路や客席の隅に積まれ、清潔感も使いやすさも損なわれます。納品の頻度を上げて在庫を減らすといった運営面の工夫も、収納計画の一部です。

造作に収納を兼ねさせる

小規模店舗では、一つの要素に複数の役割を持たせる設計が有効です。ベンチシートの下を収納にする、カウンターのスタッフ側に引き出しや棚を設ける、設置できる壁面に吊り棚を設ける。独立した収納家具を置く余裕がない場合ほど、造作と収納を一体で考える価値があります。カウンター内の収納は、客席側の足元や膝が入る空間を妨げない範囲に収めます。扉や引き出しを開けたときに通路や避難経路を塞がないかも、図面の段階で確認しておきましょう。ベンチ下は着席中に取り出しにくいため、使用頻度の低い備品を入れる前提で計画すると無理なく使えます。

設備のためのスペースを見込んでおく

分電盤、給湯器、空調の室外機、換気ダクト、グリストラップ(排水中の油脂や食品くずを分離・回収する設備)。これらは面積を必要とし、置ける場所も限られます。室外機の置き場が建物側で確保できるか、ダクトを通せる経路があるかは、物件契約前に確認しておきたい項目です。見落としがちなのが、機器を置く場所だけでなく、点検・清掃・修理・交換のために人が入り、手を動かせる空間です。ぎりぎりに納めると、フィルターの清掃や部品交換のたびに什器を動かすことになります。小規模店舗では、こうした設備スペースの有無が実現できる業態を左右することもあります。

時間帯や用途の変化に対応できるようにする

昼はカフェ、夜はバーというように時間帯で業態を変える、イベントのときだけ立ち席にするなど、小さな店舗ほど柔軟な使い方が経営の幅を広げます。可動式のテーブルや積み重ねられる椅子を組み合わせ、電源やコンセントを多めに確保しておくと、少ない手間で切り替えられます。ただし、家具を動かせば営業形態を自由に変えられるわけではありません。提供する内容によって必要な許可や届出が変わることがあり、立ち席にして人数が増える場合は、収容できる人数や避難経路の確保についても確認が必要です。想定する使い方は、設計の段階で所管の窓口とあわせて整理しておきましょう。

小規模店舗の費用と進め方|限られた予算で優先順位をつける

最後に、費用の考え方と、計画を進めるうえでの実践的な手順を整理します。

坪数が小さくても坪単価は下がりにくい

「小さい店だから安く済む」と考えていると、見積もりを見て驚くことがあります。厨房設備、給排水、電気、空調、トイレといった設備は、面積が半分でも必要な数量が半分になるわけではありません。総額は抑えられても、坪あたりの単価はむしろ上がる傾向があります。参考として、当社の業態別費用の記事「業態別の費用の目安と節約のポイント」で紹介している目安を挙げておきます。

  • 重飲食(居酒屋・和食・中華・寿司・焼肉など):10坪1,200万円〜、20坪1,800万円〜
  • 軽飲食(カフェ・バーなど):10坪1,000万円〜
  • 飲食店(一般店舗・高級店舗):一般店舗は坪単価90〜100万円程度、高級店舗は坪単価120万円〜
  • 美容室・サロン:坪単価100万円〜
  • 物販(アパレル・雑貨など):坪単価70万円〜

いずれも目安であり、物件の条件、仕様のグレード、立地、工事の範囲によって金額は変わります。どこまでが工事費に含まれるかも計画によって異なりますので、実際の金額は個別のお見積もりでご確認ください。また、ここで扱っているのは店舗づくりにかかる費用です。物件取得費や運転資金、採用・広告の費用は別途必要ですので、開業全体の資金計画はそれらと合わせて組み立てましょう。費用の考え方やご相談の流れは、アースラインの費用目安ページもご参照ください。

居抜き物件を活かせるかを見極める

小規模店舗では、既存の設備を引き継げる居抜き物件が有力な選択肢になります。厨房設備や空調、給排水がそのまま使えれば初期費用を抑えられますが、設備の状態や残り寿命、自分の業態に合うかどうかの見極めが必要です。使えない設備の撤去費がかさみ、結果的にスケルトンから始めたほうが安かったというケースもあります。判断の基準は居抜き物件vsスケルトン物件で詳しく比較していますので、物件選びの段階でご参照ください。

必要な部分を確保したうえで、意匠にかける場所を絞る

予算配分には順番があります。まず、法令や条例への対応、避難経路や什器の安全性、衛生面の要件、営業に欠かせない設備。ここは削る対象ではなく、先に確保しておく費用です。そのうえで残る予算を意匠にどう振り分けるかを考えます。全体へ薄く配分するとどこにも印象が残らない空間になりがちですので、お客様の目に触れる時間が長い場所――カウンターの天板、正面に見える壁、照明、入口まわり――に重点を置き、それ以外は標準的な仕様に抑える配分が効果的です。どこに重きを置くかは業態とコンセプトによって変わります。実際の仕上がりの質感は施工事例ページでご覧いただけます。

図面ができたら、現場で実寸を確かめる

小規模店舗では、数十センチの差が使い勝手を左右します。図面上で成立していても、実際に立つと通路が狭い、扉を開けると椅子に当たる、といったことが起こります。現場に養生テープで什器の外形を描いて歩いてみる手順を挟むと、着工前に気づける点が増えます。オープン後に働くスタッフにも参加してもらえると、より確かな検証になります。

まとめ|小規模店舗の可能性は、店舗デザイン・設計・施工の一貫計画で広がる

10坪・20坪という面積は、制約であると同時に、判断をはっきりさせてくれる条件でもあります。売上をつくる面積と支える面積を分けて配分し、視線と高さ、色と光で広がりを感じさせ、収納と設備を先に織り込む。費用は、法令対応・安全・衛生・必要な設備を確保したうえで、意匠にかける部分の重点を絞って配分する。この順序で検討していけば、限られた面積でも密度の高い空間をつくることができます。そして、面積が小さいほど、デザインと設計と施工の判断が互いに影響し合います。だからこそ、店舗デザイン・設計・施工を一貫して考えられる体制で、早い段階から相談しながら進めることが有効です。

株式会社アースラインは、創業から29年、ラーメン・焼肉・寿司といった設備負荷の高い重飲食から、ミシュラン三ツ星「日本料理 龍吟」をはじめとする高級飲食店まで、幅広い規模・業態の店舗づくりを手がけてきました。企画・店舗デザイン・設計・施工、そして開業に向けた立ち上げサポートまでをワンストップでご提供し、東京23区を中心に全国に対応しています。「この広さで何席取れるか」「この物件でこの業態が成立するか」といった段階のご相談も、図面を描く前からお気軽にお声がけください。

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