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23:常連客が通う雰囲気の作り方
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常連客が通う雰囲気の作り方|店舗デザイン・設計・施工で「また来たくなる」空間をつくる
「一度は来てくださるのに、二度目につながらない」――店舗デザイン・設計・施工のご相談の中で、開業後のオーナー様からよくお聞きするお悩みのひとつです。料理にもサービスにも自信がある。それでも常連客が育たない。その原因は、味やメニューではなく、お客様がその場で過ごす「居心地」にあるのかもしれません。雰囲気という言葉は感覚的に語られがちですが、実際には光・音・温度・素材・席の配置といった、設計で調整できる要素の積み重ねでできています。この記事では、常連客が自然と通いたくなる空間の考え方と、設計・施工の段階で押さえておきたい具体的なポイントを解説します。
常連客が生まれる店の共通点|店舗デザイン・設計・施工で考える「雰囲気」の正体
新規のお客様と常連のお客様では、お店を選ぶ判断材料がまったく異なります。新規のお客様が頼りにするのは、外観、看板、SNSの写真、口コミといった「外側の情報」です。一方で、二度目以降のお客様が思い出すのは、前回そこで過ごした時間の記憶――席の座り心地、会話のしやすさ、店を出たときの満足感です。つまり常連化には、来店してから帰るまでの体験の質が大きく関わっています。
この記事では、体験の質を左右する「雰囲気」を、わかりやすく三つの層に分けて考えてみます。
■ 第1層:身体的な快適さ
明るさ、音の響き、室温、椅子の座り心地、テーブルの高さ。お客様が意識的に評価することは少ない部分ですが、ここに不快さがあると、料理の記憶より先に「なんとなく疲れた」という印象が残ります。長居しづらさを感じる場合、こうした身体的な快適さが原因の一つになっていることがあります。
■ 第2層:心理的な安心感
視線が気にならない席の向き、隣席との距離、入口からの見え方、スタッフとのほどよい距離感。ここが整っていると、お客様は「落ち着ける」と感じます。落ち着けるお店は滞在中の会話が弾み、その体験が次の来店動機につながっていきます。
■ 第3層:記憶に残る個性
素材の質感、照明の色、香り、店主やスタッフとの関係性。快適さと安心感の上に、そのお店ならではの個性が乗ることで、「あの店に行きたい」という指名につながります。
この三つを考える際は、まず身体的な快適さを土台として捉えると整理しやすくなります。第3層の個性づくりに費用をかけても、第1層の快適さが欠けていれば、通う理由にはなりにくいものです。私たちアースラインでは、デザインの打ち合わせの段階から「どんな時間を過ごしていただきたいか」を伺い、その体験を実現するための設計・施工へ落とし込むことを大切にしています。店舗デザイン・設計・施工を一貫して担う体制であれば、意匠の美しさと過ごしやすさを、図面の段階から同時に検討していくことができます。
居心地を決める4つの環境要素|光・音・温度・手触り
ここからは、第1層の快適さを構成する具体的な要素を見ていきます。いずれも設計段階で調整できるものばかりです。
■ 光:明るさより「色と当て方」
くつろぎを重視するお店では、2700〜3000K程度の温かみのある電球色を選択肢とし、テーブル面や手元に光を集め、周囲の明るさを抑える計画が効果的です。天井全体を均一に明るくすると、作業空間のような印象になり、長居しづらい空気が生まれます。また、光源が直接目に入るまぶしさ(グレア)は疲労感の原因になるため、器具の位置や遮光角度の検討が欠かせません。時間帯によって明るさを変えられる調光機能を入れておくと、ランチとディナーで異なる表情をつくれます。照明の基本的な考え方は、関連記事「店舗照明計画の基本と実践」でも詳しく解説しています。
■ 音:静けさではなく「ほどよい響き」
音は雰囲気への影響が大きい一方、見落とされやすい要素です。ガラス、タイル、コンクリートなど硬い素材で構成された空間は音が反響しやすく、混雑時に会話が聞き取りづらくなります。逆に無音に近い静けさは、隣の会話が丸聞こえになり、お客様が話しづらい状況を生みます。吸音性のある天井材やファブリック、木の仕上げを部分的に取り入れ、BGMの音量とスピーカーの配置を含めて計画することで、「話しやすい響き」に近づけることができます。
■ 温度と空気:不快さの多くはここから生まれる
入口付近の席に冷気が流れ込む、空調の吹き出し口が特定の席の真上にある、厨房の熱が客席に伝わる。こうした状況は、その席を「避けられる席」にしてしまいます。空調機の位置と席の配置は、設計段階でセットで決めることが大切です。とくに焼肉やラーメンなどの重飲食では、排気・換気の計画が客席の空気環境を直接左右します。設備負荷の高い業態を数多く手がけてきた経験から、私たちは客席の快適性を設備計画と一体で検討しています。
■ 手触り:身体が触れる場所の質
テーブルの角の処理、椅子の座面と背もたれの角度、カウンターの木の質感。人の身体が直接触れる部分の質は、無意識のうちに満足度へ影響します。内装全体の予算が限られる場合でも、触れる場所には優先的に費用を配分する判断が、居心地の差として表れやすい部分です。
「自分の居場所」がある店は通われる|席の設計と心理
常連のお客様の中には、「いつもの席」を好まれる方もいます。その席があることが、通う理由そのものになっていることも少なくありません。ここでは、居場所と感じてもらえる席のつくり方を整理します。
■ 席のバリエーションを持たせる
同じ形のテーブル席が均一に並ぶ空間は、効率的である一方、お客様にとっては「どこに座っても同じ」空間になります。カウンター、壁付きの2人席、ベンチシート、奥まったテーブルなど、性格の異なる席を組み合わせることで、一人でも、二人でも、少人数のグループでも、それぞれに合う居場所が生まれます。利用シーンの幅が広がることは、来店機会そのものを増やすことにもつながります。
■ 背中が守られている席は落ち着く
人は背後に人の動きがある状態では落ち着きにくいものです。壁を背にした席、背もたれの高いベンチ、腰高の袖壁(席と席を仕切る低い壁)などで背中側を守ると、同じ広さでも安心感が変わります。通路に背を向ける席が多いレイアウトは、居心地の面では不利になりがちです。
■ 距離感は数字で確認する
隣席との距離やテーブル寸法は、感覚だけではなく実寸で検討することが大切です。必要な寸法は、業態や提供する料理、客単価、席の使い方によって変わります。ゆとりを持たせれば居心地は上がり、席数は減ります。この配分をどう取るかは、客単価と回転の想定を踏まえた経営判断です。回転率との両立については、関連記事「回転率を上げる座席配置と動線」もあわせてご覧ください。
■ 荷物と上着の置き場を用意する
常連化を左右する見落としがちな要素が、荷物の置き場です。バッグを床に置かせてしまう、コートを膝に抱えたまま食事をさせてしまう状況は、静かに満足度を下げます。座面下のバスケット、カウンター下のフック、壁面のコート掛け、足元のゆとり。こうした小さな配慮は、造作の段階で計画しておくことで、後から取ってつけた印象にならずに納まります。
スタッフとお客様の距離感をデザインする|会話が生まれるレイアウト
常連客の来店動機を尋ねると、「料理」と並んで「人」が挙がることがよくあります。店主やスタッフとのやりとりは、他店には真似のできない価値です。そしてその関係性は、レイアウトによって生まれやすくも、生まれにくくもなります。
■ 視線が合う高さを設計する
立っているスタッフと座っているお客様では、目線の高さに差が生まれます。カウンターの天板高さや厨房床のレベル差を調整することで、見下ろす関係になりにくい、話しかけやすい距離感をつくることができます。カウンター主体の高級店では、この寸法の詰め方が接客の質を大きく左右します。ミシュラン掲載店舗をはじめとする高級飲食店の施工でも、私たちが特に時間をかけて検討する部分です。
■ 「声をかけられる位置」に立てるようにする
スタッフが客席全体を見渡せる定位置があるかどうかで、お客様の要望に気づけるスピードは変わります。逆に厨房に入りきりで客席が見えない配置では、丁寧な接客をしようにも物理的に難しくなります。レジ位置、ドリンクカウンター、配膳の出口をどこに置くかは、接客スタイルとセットで決めるべき設計項目です。
■ 動線に余裕があると、会話が生まれる
スタッフの移動距離が長く、常に急いでいる状態では、お客様との会話に使える時間は生まれません。厨房から客席までの距離、下げ物を運ぶ経路、バックヤードへの往復。これらを短く整理することは、単に効率の話ではなく、接客に余裕を生み、雰囲気を良くするための設計でもあります。
■ 常連と新規客のバランスに配慮する
常連客で賑わうお店には、初めてのお客様が入りづらくなるという課題もあります。入口を入ってすぐの場所が常連の定位置になっていると、新規のお客様は「場違いかもしれない」と感じやすくなります。入口付近には誰が座っても自然な席を配置する、視線が集中しにくい動線をつくるといった工夫で、新しいお客様が入りやすい空気を保つことができます。常連客の居心地と、新規客の入りやすさ。この両立こそが、長く続くお店の空間設計といえます。
雰囲気は時間とともに育つ|素材選びと維持管理の視点
開業直後が最も美しく、あとは劣化していくだけの空間と、年月とともに味わいが深まっていく空間があります。長く通われるお店をつくるには、時間の経過を設計に織り込む視点が欠かせません。
■ 経年変化が「味」になる素材を選ぶ
無垢材、真鍮、左官仕上げの壁、モルタルといった素材は、使い込むほどに色や質感が変化し、その店で重ねられた時間そのものが空間の魅力になっていきます。一方、化粧シートを貼った建材や量産のクロスは、初期のコストを抑えられる反面、剥がれや黄ばみが「古びた」印象として表れやすい傾向があります。すべてを高価な素材で仕上げる必要はありません。お客様の目と手が触れる範囲に、経年変化を味方にできる素材を集中させるという配分が現実的です。
■ 汚れやすい場所を想定して仕上げを選ぶ
清潔さは、雰囲気の土台です。壁の腰から下、テーブル脇、厨房まわりの床など、汚れが集中する場所には、清掃しやすい仕上げを選んでおくことで、数年後の見え方が変わります。重飲食では油汚れへの耐性、美容室では薬剤への耐性など、業態ごとに必要な性能は異なります。
■ 後から手を入れられる設計にしておく
照明の位置を変えられるライティングレール、入れ替え可能な装飾やグリーン、可動式の什器。造作でつくり込む部分と、変えられる部分を分けて計画しておくと、大がかりな工事をせずに空間の鮮度を保てます。数年後の改装まで見据えた素材と工法の選択は、施工まで担う会社に相談することで精度が上がります。
■ 費用配分は「滞在時間の長い場所」を優先する
限られた予算をすべてに均等に配分するより、お客様が長い時間を過ごす客席まわりへ重点的に投じるほうが、居心地としての手応えを得やすくなります。どこに投資し、どこを抑えるかの判断は、業態と客単価によって変わります。費用の考え方については費用目安ページを、実際の仕上がりの雰囲気については施工事例ページをご参考ください。
まとめ|通いたくなる雰囲気は、店舗デザイン・設計・施工の積み重ねから生まれる
常連客が通うお店の雰囲気は、偶然生まれるものではありません。光・音・温度・手触りといった快適さの土台、自分の居場所と感じられる席の設計、スタッフとの心地よい距離感、そして時間とともに深まる素材選び。これらを一つずつ積み上げていくことが、「また来たい」と思っていただける空間につながります。そしてその多くは、店舗デザイン・設計・施工を一体で考えることではじめて実現できる要素です。
株式会社アースラインは、23年以上の実績と、重飲食からミシュラン掲載の高級店まで幅広い業態を手がけてきた経験を活かし、企画・店舗デザイン・設計・施工を自社で一貫管理してご提供しています。東京23区を中心に全国対応が可能です。「長く愛されるお店にしたい」というご相談も、コンセプトづくりの段階からお気軽にお問い合わせください。
株式会社アースラインです。お知らせなどを発信しています。
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